ヒビ、コトホギ

本の感想とか、日常感じたこととか。徒然変わる気持ちをピン留めするつもりで、毎日を言祝ぎたい。

異文化こみゅにけーしょん

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ふらりと訪れた本屋で、このミス大賞との帯をみて手に取り、ファンタジーな舞台設定に惹かれ読み終えた、白川尚史著『ファラオの密室』。

 

一気に読み終えましたわ。

 

トンデモ設定になりかねない、主人公がミイラであるという状況も、エジプト神話と当時の文化背景の中で描くことにより、そういうものかと読者に信じさせ、序盤から白けさせることなく一気に物語に引き込まれる。

 

死者がミイラとして復活し、普通に行動していることに、誰も驚いたり恐怖したりすることのない不可思議さを頭のどこかに感じつつ読み進めるなかで、異国から来た奴隷の少女の感情が読者に寄り添い、いいガイドになっていた。

 

トリックだったり動機だったりが、きちんと舞台設定と結びついていて、最後まで没頭して読み終えることができた。

 

 

主人公と奴隷の少女のストーリーが交わったことも、今思うと生者と死者の、復活の対比だったんだな。アウトプットしてみて気づくことってあるねぇ。

 

主人公は、文字通り死んで復活したからこそ自らの魂を見つめなおすことができ、自らが生きた意味に胸を張れるようになったし、

 

生きながらに死んでいた奴隷の少女は、この物語を通じて、改めて人間として生き直す(復活する)ことができた。

 

この対比によって、最後の読了感が寂しさではなく、爽やかなものになったのかな、と。

(だって主人公は最初から「死」に向かって進んでいるんだもの、思い入れができると寂しくなるやん)

 

 

死は終わり、と考える死生観が多いなかで

死こそが始まりであり、生きている間は死んだ後のための準備期間と考えるエジプトの死生観。

 

ミイラやエジプト神話については齧った程度しか知らないので、エジプト神話や文化をもうすこし知りたいなとも思った。

 

 

とにかくも。

疾走感があり、ライトなミステリ要素がありつつも、成長譚として爽やかな読後感を味わえる良き物語でした。

 

 

このミス大賞をとる物語で、私が手に取るものはこういうのが多いなと思う。あらためて。

 

・舞台設定が特殊(神話やSFやホラーなど)

・一息で読みたくなる疾走感

・誰かしらの成長や、相互理解などの爽やかさな読後感

 

トリックがすげぇ!初めてみた!というのは、もう普通のミステリでは難しいことは重々承知…なので、舞台設定を工夫したものが多くなってるのと、そういうのに惹かれがちなのでしょう。

 

時間を忘れて本が読める幸せを感じたい人にお勧めします。

 

君たちはどう生きるか、私はこたえられるのか。

※個人の感想しかありませんが、

ネタバレにつながるかもなので、イヤな方はお気をつけて。

 

___

 

前情報がないことでしか得られない体験がある。

 

世の中に作品が生み出されるとき、そして、自分が生きているとき、この2つのタイミングが揃わなければ、出会うことができないわけですが

 

だから仕方のないことではあるのですが

 

中学生のとき、

高校生のときに出会っていたとしたら

何を自分は感じたのだろうか。と、思いながらこれを書いている。

 

 

や、高校生のときに見たかったなーとかそういうわけではないのだけれど。

 

 

最近の自分ときたら

アイデンティティを少し見失っている。

 

自信もなければ理想もない。

 

シニカルに表現される"大人"そのもの。

 

悩みはするがエネルギィが足りていない。

 

 

 

映画自体も、

表面的にしか受け取れていないんじゃないか。

 

なので、そのもやをアウトプットしておこうと思った。ひさしぶりにここを思い出した。

 

 

 

これまでに自分が積んだ積み木はいくつなのだろうか?悪意に染まったパーツはいくつあった?

 

バランスはどうなっている?

自分で積み木を選べている?

渡されたものを積んでいる?

 

わたしが創りたかった世界を、わたしは創れている?

 

 

わたしが、創りたかった世界とは?

 

 

 

1人の少年の冒険活劇として、成長物語として、楽しめた。さまざまに散りばめられた、たくさんの大好きな要素を発見するのも嬉しかった。

 

タイトルから見て不安に感じていた、説教ぽさや胡散臭さは全くなかったし、主人公の心の成長も、嫌味なく受け取れた。

 

彼はなぜ躊躇なく選択できたのだろう。

 

抱いていたさまざまな反発は消えてはないだろう。非道い社会情勢のなか、不本意な生活を送らねばならないだろう。

けれど、自らの悪意を認め、大好きな母親と別れ、冒険の中で培った友情も、理想の世界を創れる力も捨てて、ドアを潜る選択をすることができたのは、何故なのだろう。

 

まあ、残ったとしても苦労はしそうではあったけれど、、

 

どうあっても、生きるのは苦しいことなのかもしれない。一切皆苦

だからその苦しみの中で、自分はどう生きるのか、選択して積み上げていく覚悟が問われているのかも。な。

 

 

やはり言語化するのは難しい。

 

みてよかった。

 

今日見るべきだと、ナニモノかに後押しされたのだと信じている。

 

 

つながりで、鈴木敏夫展にも足を運ぶ。

 

以前、高畑勲さんの展示会に行ったときに感じたパワーを、今回の鈴木敏夫さんの展示会ではもっと強烈に感じた。

 

プロデューサーとしての考えや行動をアウトプットしてくれていたことが大きい要因のように思う。

 

仕事は楽しく。

楽しくするために努力をする。

自分が率先して動く。だからまわりが動く。

動かなくても動かしにいく。

ロジカルに説得もするし、熱量もぶつける。

 

やるべきことのなかで

自分の理想や夢を叶えてもいる。

 

1番、監督に寄り添って、ときには代弁者になり、ときには壁打ち相手になり、どんなに不条理でもとことん相手を理解して、最上のものを作りだす。

 

 

理屈はわかる。

自分の行動を振り返るとこうだった、ということだとも思う。やり遂げてきているから今がある。

 

本当にすごいプロデューサーだ。

理想を体現している。

 

 

 

終わりにもらった言葉。

 

まったくすぎて突き刺さる。

大凶なのはいまの自分への戒めなのかもね。

 

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よいタイミングで、大事なインプットができた。

 

理想を描こう。

そしてそれを叶えるための計画を立てるのだ。

そのためには現実に即して動くしかない。

動かなければ変わらない。やりきらなければ。

 

"現代社会では、理想ばかりを追う傾向が強い。

だから現実的である必要があるがそればかりでは面白くない。

理想を失わない現実主義者になれ。

夢や希望は忘れちゃいけない反面、「やり切る力」がなければ実現できないから。"

 

 

帰り道、少し遠回り

ひさびさに本を読んだ投稿…。

 

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話題書とのことで平積みされていた、雨穴著『変な家』。

なんの前情報もなく手に取ったので、最初はほんとにルポライターもので、いくつも変な間取りが紹介されてるのかなと思ったところ。

 

一軒の家の間取りの謎を追いかけるストーリーにぐいぐい引き込まれ、気づけばあっという間に読み終えてしまった。

 

やー、ひさしぶりな疾走感!

 

動機とか背景とかはふむ…という感じだったけど、

あっという間に読み終えるこの感覚、気持ちかったな。

 

さらっと、ぞわっとしたいときにおすすめの一冊。

夏にホラーを読むのは、夜が短いからかもしれない

おひさしぶりですね。

 

あの頃からは世界が少しだけ変わった3ヶ月。

いかがお過ごしでしたか?

 

さて久しぶりに読書感想など。

 

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小野不由美著『ゴーストハント 旧校舎怪談』シリーズ1作目。の、リライト版!

 

もちろん読んでましたとも。当時、ティーンズハートで刊行されていた、「悪霊」シリーズのときに。

まだ小学生とか中学生じゃないかしら。

 

図書館で見つけて初めて読んで。

小野不由美さんを知ったのは十二国記とどっちが先だったのかな。。

ホラー作品の方が先だった気がする。

黒祠の島』とか『東京異聞』とかさ。

まぁとにかく当時小野不由美という作家の生み出す物語にハマって、なんでも貪るように夢中で読んでいた。

 

ミステリでホラー。ホラーでミステリ。

奇しくも、前回も似たような感想を書いていたけれども、本当にこのバランスが絶妙で。

開示された情報からわからないことを解きほぐしてゆくストーリー構成と、「謎を解明する探偵役」と「ワトソンくんとして、語り手役をしながら我々読者の視点や気持ちの代弁者を担う主人公」という登場人物設定。

本格的なミステリでありながらも、どこかに残る「得体の知れないモノ」に対するひとさじの恐怖。

 

論理的に解明されていくのにも関わらず、もしかしたらナニカ不思議なことがあるのではという期待と、ゾッとしたり怖くなったりというホラーの醍醐味も味わえる。そんな良作です。

 

大音量で脅かしてくるようなホラー映画は嫌いだけど、カメラワークや音などの演出でしみじみ怖くなるホラー映画は見入ってしまう。

モンスターや幽霊が一度も出てこないのに、ナニカの存在をずっと感じ続けさせられるような。

 

ホラーとはファンタジーなのか?

解明されてないモノや不確かなモノは全て作りものなのか?

ないと思いながらも、可能性を否定しきれない、その間の部分をくすぐられるのです。

 

十二国記はファンタジーだけど、緻密な世界設定による圧倒的な存在感で、リアリティを感じるよね。

 

ホラーも、淡々とした筆運びで、決して怖がらせようとしてるようには感じないのに、しみじみ怖いんだよ。

 

この部分では小野不由美さんを超える作家にまだ出会ってない気がするなぁ。

 

7巻刊行とのことだし、中身の記憶はほぼなくなっているので、もう一回読み直す楽しみができました!

 

夏、だしねー。

ミステリとオカルトって、でも実は長いこと表裏一体よね

久々に、読書感想を。

 

今回読んだのは、

今村昌弘著『魔眼の匣の殺人』。

 

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前作『屍人荘の殺人』は、ミステリー大賞も取り、最近映画も公開されたのでご存知の方も多いと思う。

 

これは、その続編にあたる物語。

 

『屍人荘の殺人』も、店頭でミステリー大賞の大型新人!というポップを見て手に取ったのですが。

オカルト路線で話が進むし、トンデモ設定の今までにない分野を切り開いたことが持て囃されているのかなと思いきや。

 

しっかりとミステリの王道に則り、読者に対しても誠実なトリック裁きで、最後に伏線をしっかり回収しつつもオカルトの線も仄かに残すという絶妙なバランスで。

スピード感持ってわくわくと読み進められる新本格派ミステリで、期待以上の面白さだったのよね。

 

てことで、今作も遅ればせながらようやく読了。

 

前作に比べて、より洗練されている気がした。

超常的なものに対する敬意も感じる、論理的なミステリなのよね。

今回もオカルトを主軸に、探偵と助手が事件に巻き込まれ(今回は自ら身を投じてたけど)、これはもはやすべてが超常現象なのでは…と思い始めた頃に、人為的な作為を感じていくストーリー展開。

 

ミステリならば、まさに王道ど真ん中と言える大前提の中で、予言・未来予知という非現実的な物事を逆手に取ったワイダニットは素晴らしかった。

もちろん、ハウダニットも申し分なし!

 

一重二重と張り巡らされた伏線を、この残り枚数ですべて回収し切ったところにも、不思議なカタルシスを感じた。。

 

 

やー!ミステリの面白さはまさにこれだわー!

と、清々しい気持ちで読み終われる良作です。

 

初心者向けというよりは、コナンドイルやアガサクリスティーを嗜み、綾辻行人有栖川有栖で新しい扉を開き、最近のミステリはもう小ネタに走りすぎてんなーと思っちゃうようなミステリ好きにオススメしたい!ほんと是非に。

 

続きも明示される引きで終わったから、次作が楽しみだわー!

 

心に残る映画はもれなく名作なのです

このところ、本より映画視聴が増えている。

 

今回は、『パラサイト-半地下の家族』の感想を。

 

第72回カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞した作品。

韓国の格差社会を、コミカルな描写やミステリ成分をまぶしたストーリーで描いていく。

 

社会風刺的な、もっとかたくて悲壮な内容なのかなと思っていたけれど、予想に反して面白く、笑いどころも多くて見やすい作品だった。

 

ネタバレ厳禁!とのことだったのですが

感想を残すには、中核の部分に触れざるを得ないので、この先を読むのはネタバレしてもいい方のみで。。

 

 

半地下の家に住む(=貧困層)一家と、

高台の大きな家に住む裕福な一家。

 

劇中では、韓国経済や文化に詳しくない人間にもわかりやすく、会話と映像でその対称性を浮き彫りにしている。説明的になるとうんざりしてしまいそうな、しかし重要な背景を、冒頭から10分ほどで視聴者に焼き付ける。

 

「計画」を立てて家族揃って入り込んでいく過程は、愉快で思わず応援したくなる。

家族全員が「計画」通りに入れ替わったところで、事件が起こる。

 

思うに、少し調子に乗りすぎるのだ。

政治のせい、格差のせい、その環境にいるせいで色々と上手くいかない。家長である父親は定職についていないし、長男は大学に入れていない。

 

そんな「計画通り」と無縁であり続けた彼らが、

初めて最初から最後まで「計画通り」にうまくことを進めるのだ。

調子に乗っても仕方ないかもしれない。

 

だからこそ「計画外」のことが起きたときに、ボロが出る。

 

最初から、節々にリスクの因子は散りばめられていた。

 

登場人物は、大人から子どもまで、ちょい役から主役まで、すべからく全員がどこかおかしくて、危うさを秘めている。

 

そのすべての危うさを雪だるまのように巻き込みながら、収束へ向かうラストへのスピード感は見ものだと思う。

 

そして、その裏では丁寧に丁寧に、ナニカが、父親の中に降り積もっていく様子が描かれる。

劇中だけではなく、彼の人生通して、もしかしたらずっと降り積もり続けていたのではないかと感じる。

 

ささやかで、だから気にしていなかったソレが、しかし、高台の一家の生活を身近に感じ、体験したことで、より一層、突きつけられてしまうのだ。

 

 

雇い主が妻に対して自分を蔑む言葉を発するのを聞いてしまったとき。

 

土砂降りの中、高台の家から降りて、降りて、降りて。汚水混じりの水が流れ込む自宅から家財道具を持ち出すとき。

 

地下から出てきた男に対して、雇い主がとったささやかな行動を見たとき。

 

彼の中に降り積もりつづけてきたナニカが充満して、粉塵爆発のように弾けた瞬間を、視聴者もともに経験する。

 

事件の前夜、父親が息子に話す言葉。

「計画をするから、うまくいかない。計画がなければ、失敗もない。」

最初から諦めて、計画的な生き方を否定したような。これが全ての根幹のようにも思われて、けど自分の中にもどこかしらある諦めの感情をくすぐり、虚しさと怒りを同時に感じる。

 

 

喜怒哀楽すべての感情を抱かせながら、最後まで心を掴んで離さない感じ。とても面白かった。

 

 

 

この記事を公開しないまま2週間もおいといたら、アカデミー賞もとったわね。アジア初だって。すごい!

 

面白い映画は、映画館でみるのがいいね。。

集中して物語が駆け抜けていく快感を覚えてしまった!

吹き渡る冷たい風、見たことない心象風景

ヤァ新年あけてだいぶ経ってる。

 

アナ雪2を見てきた!

ステマ騒動とかあってなんとなく敬遠してしまっていたのだけど。。

 

やっぱりディズニー&ピクサーはすごいなぁ。

さすがエンターテイメントのトップ。文句なしに面白かった。

 

物語のスピード感、テンポがめちゃくちゃいいし、

主要メンバーは前作からさらに魅力的になっている。

新しいキャラクターも愛らしくカッコよく、さらに好きになれて、世界にしっかり根付いている。

 

エルサがケルヴィム?を乗りこなすシーンは、自分が馬に乗るからか、めちゃ痺れたー。かっこよ!!

 

年末に機内で見た「モアナと伝説の海」もすごく良かったし、実写版アラジンのジャスミンも独唱のとこが非常にカッコよかったし、改めてディズニーのすごさを痛感している。

ムーランの実写版も見たくなってきた。

 

 

変なステマしなくても充分にファンが語ってくれそうだと思ったけど…。

前作見たことない人が描いた感想載せるよりもさ。

それとも、前作見たことない人にも見にきてもらいたかったのかな?

 

マーケティングも行き過ぎるとブランド毀損になるよね、現に私は行きたい気持ちを削がれていたわけだ。

巻き込みを仕掛けに行くのも、わざとらしくなると敬遠されるし。

本当の意味での応援者を作っていかないと、ブランドというのは形成されてゆかない。難しいね。

ブランドは、ファンが語る言葉。そして、歴史。

 

 

さて、最後にアナ雪2の好きだったとこ覚書。

小ネタばっかだけど、ネタバレ嫌な人は見ないことをオススメします。

 

ジェスチャーゲームが苦手なエルサ

・姉なのに自由なエルサ

・姉ならではの頑固さを見せるエルサ

・実は一番苦労性なのはアナでは…という疑惑

・辛いとこから立ち上がるアナ、カッコよかったよ

・道が見えないときは、正しいと思うことをする

・道を決めるのは自分

・トナカイのコーラス(イイ顔付き)

・スヴェンの友達がいといったら!

・ケルヴィムを乗り従えるエルサさま

・舌舐めずりするサラマンダーかわいい

・吹き抜ける風を感じるカメラワーク

・風の冷たさや香りを感じる映像美!!!

 

やぁとても面白かった!